今さら聞けない!顔認証の仕組みを徹底解説【初心者向け】
- Yukaringo
- 6月6日
- 読了時間: 7分
更新日:1 日前

今さら聞けない!顔認証の仕組みを徹底解説【初心者向け】
なぜ今、顔認証の仕組みを知るべきなのか?
「顔パス」という言葉があるように、昔から「顔で判断する」ことは人間の自然な行為でした。でも今や、それをコンピューターがやってのける時代。スマートフォンやタブレット端末でのログイン等に利用されている Face ID などの顔認証ログインの普及により、顔認証技術に馴染みのある方や、その応用に関心を持つ方も増えてきました。
朝スマホのロックを解除するときから、オフィスビルの入退室、コンビニでの決済、さらには勤怠管理や来客対応まで。気がつけば顔認証は私たちの生活のあらゆるシーンに浸透しています。
でも「なんとなく便利だから使ってる」という方も多いのではないでしょうか?企業の担当者なら「導入を検討しているけど、仕組みがよく分からない...」という声もよく聞きます。
顔認証とは?まずは基本の定義から
生体認証の一種としての位置づけ
顔認証は、指紋認証や虹彩認証と同じ「生体認証(バイオメトリクス認証)」の仲間です。ISO/IEC 19795-1(Biometric performance testing and reporting)で定められた国際標準に基づく認証技術で、その人だけが持つ身体的な特徴を使って本人かどうかを判断します。
パスワードのように「忘れる」ことがないし、カードのように「なくす」こともない。これが生体認証の最大のメリットです。
顔認識と顔認証の違い
よく混同されがちですが、実は明確に異なる役割を持っています。
顔認識:「あ、顔がある」「これは人の顔だ」と検出・識別すること
顔認証:「この顔は田中さんだ」「この人は登録されている社員だ」と特定の人物と照合すること
つまり、顔認識は「顔を見つける技術」、顔認証は「誰の顔かを判断する技術」というわけです。防犯カメラで「不審者を検知」するのは顔認識、社員証代わりに「入退室管理」するのが顔認証、という感じですね。
顔認証の仕組み:4ステップで解説
さあ、いよいよ本題です。顔認証技術は、映像や画像の中から人を判断する技術で、画像中から「顔がどこにあるか」を検出し、瞳、鼻、口など、「その人の顔の特徴的なポイントがどこにあるか」を見つけ、検出された顔の特徴点から「誰であるか」を判定するという高度な分析プロセスです。これを4つのステップで整理できます。
ステップ①:顔の検出(Face Detection)
まずは画像の中から「顔らしい部分」を見つけ出します。
コンピューターにとって、写真は単なる点(ピクセル)の集合体。その中から「ここに顔がありそう」という領域を特定するのが最初の仕事です。
昔は「目が2つ、鼻が1つ、口が1つ」といったルールベースでしたが、今は機械学習を使ってより精度よく検出できるようになりました。横顔や斜め顔、さらには一部が隠れていても検出できる技術が進化しています。
ステップ②:特徴点の抽出(Feature Extraction)
顔を見つけたら、次はその顔の「特徴」を読み取ります。
人間でも「目が大きい」「鼻が高い」「口角が上がっている」など、顔の特徴で人を覚えますよね。コンピューターも同じように、顔のパーツの位置や大きさ、形状を数値化して記録します。
具体的には、目尻・目頭・鼻の頭・口角・あごのラインなど、数十から数百の「特徴点」をマークして、それぞれの座標や相対的な位置関係を計算しています。
ステップ③:顔のデータ化とベクトル変換
特徴点の情報を、コンピューターが扱いやすい「数値の羅列(ベクトル)」に変換します。
例えば、「[0.85, 0.23, 0.91, 0.44, ...]」といった具合に、顔の特徴が数値で表現されるわけです。これが「顔のデジタル指紋」とも呼べるデータになります。
この変換により、照明の変化や表情の違い、年齢による変化にも対応できるようになります。同じ人でも笑顔と真顔では見た目が変わりますが、本質的な特徴は維持されるという仕組みです。
ステップ④:データベースとの照合
最後に、変換されたデータを事前に登録されているデータベースと照合します。
「この数値パターンに近いデータが登録されているか?」を高速で検索し、一致度が高ければ「認証成功」、低ければ「認証失敗」という判定を下します。
照合の方式:1対1(認証) vs 1対多(認識)
顔認証には、用途に応じて2つの照合方式があります。
1対1照合(認証)
「私は田中です」と名乗った人の顔と、田中さんの登録データを比較
スマホのロック解除や銀行ATMなどで使用
処理が早く、精度も高い
1対多照合(認識)
顔画像を全登録者のデータと照合して「誰か」を特定
防犯カメラや入退室管理システムで使用
大量のデータとの照合が必要で、処理に時間がかかる場合も
ユーザー認証と監視カメラでの利用の違い
用途によって求められる性能も変わってきます。
ユーザー認証(スマホなど)
本人がカメラの前に立って認証を受ける
照明条件や角度をコントロールしやすい
高精度・高速処理が求められる
監視カメラ
不特定多数の人が様々な条件で映り込む
遠距離・斜め角度・部分的な遮蔽もある
リアルタイム処理と広範囲な照合が必要
誤認率と認識精度とは?
顔認証の性能を測る重要な指標が2つあります。これらは国際標準ISO/IEC 19795-1(Biometric performance testing and reporting)で定義されている業界標準の評価基準です。
FAR(False Acceptance Rate:他人受入率)
本人ではない人を「本人だ」と誤って認証してしまう確率です。セキュリティの観点で重要な指標で、低いほど良いとされます。
FRR(False Rejection Rate:誤拒否率)
本人なのに「本人ではない」と誤って拒否してしまう確率です。利便性の観点で重要で、これも低いほど良いとされます。
実際の運用では、セキュリティ重視なら FAR を下げ、利便性重視なら FRR を下げるといった調整が行われます。「絶対に他人を通したくない」なら厳しく、「多少の誤認は許容するから使いやすく」なら緩く設定するわけですね。
世界最高レベルの技術評価
顔認証技術の客観的な評価として、米国国立標準技術研究所(NIST)が実施する顔認証技術のベンチマークテスト(FRVT)があります。これは世界各地の数百の企業・研究機関が参加する権威ある技術評価で、100か国以上の様々な人種・性別の数百万人の画像の大規模データベース用いた顔認識技術評価テストとして業界標準に位置づけられています。
導入時に気をつけたいこと
環境条件(光、マスク、帽子)
顔認証は万能ではありません。以下のような条件で精度が落ちることがあります。
照明条件
逆光や強い影がある場合
蛍光灯のちらつきがある環境
屋外での太陽光の変化
遮蔽物
マスク着用(コロナ禍で対応技術も進歩)
サングラスや帽子
髪の毛で顔の一部が隠れている場合
その他
カメラからの距離が遠すぎる・近すぎる
顔の角度が極端(真横など)
表情の大きな変化
プライバシー・個人情報保護の観点
顔画像は重要な個人情報に該当します。個人情報保護法において「個人情報」とは「生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報」と定義されており、導入時は以下の点に注意が必要です。
法的要件
2022年4月1日に施行された令和2年改正個人情報保護法への準拠
取得・利用目的の明示
本人同意の取得
個人識別符号としての取り扱い
顔認証や顔画像など、電子計算機で認証可能なデータは「個人識別符号」に該当します。たとえ氏名などが分からなくても、それ自体で個人を識別できるため、「個人情報」として法的に扱われます。
技術的対策
データの暗号化
アクセス権限の管理
定期的なセキュリティ監査
運用面での配慮
利用者への十分な説明
オプトアウト(利用拒否)の仕組み
データの適切な廃棄
まとめ:顔認証は「便利さ」と「責任」のバランス
顔認証の仕組み、いかがでしたか?複雑に見えて、実は理にかなった4つのステップで動いているんです。
振り返りポイント
顔認証 = 顔の特徴を数値化 → データベースと照合
1対1認証と1対多認識で用途が異なる
精度の指標(FAR/FRR)を理解して適切な設定を
環境条件とプライバシー保護への配慮が重要
技術の進歩により、今後ますます身近になる顔認証。便利さの追求と同時に、適切な運用・管理が求められる時代でもあります。
2024年7月に新しい生体認証精度評価方法に関する国際規格ISO/IEC 5152が発行されるなど、技術標準も進化し続けています。導入を検討される企業の皆様は、最新の技術動向と法的要件を理解した上で、自社の用途に最適なソリューションを選択してください。
生体認証の評価方法に関する国際規格は、技術の進展に応じて随時更新されています。最新の規格情報はISO(国際標準化機構)の公式Webサイト等でご確認ください。
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