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システム開発の失敗事例と防止策|よくあるトラブルを要件定義〜納品まで解説

  • 執筆者の写真: Yukaringo
    Yukaringo
  • 3 日前
  • 読了時間: 12分

更新日:2 日前

システム開発の失敗事例と防止策|よくあるトラブルを要件定義〜納品まで解説

システム開発の失敗事例と防止策|よくあるトラブルを要件定義〜納品まで解説

※本記事は、アビココ株式会社が提供するサービスに関連する内容を含みますが、読者の皆さまに有益な情報をお届けすることを目的として執筆しています。


システム開発の約7割が当初計画通りに進まない現実

「予算オーバーした」「納期に間に合わなかった」「出来上がったものが想定と全然違った」──システム開発の現場では、こんな悲鳴があちこちで上がっています。


実は、日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)の「企業IT動向調査報告書2023」によると、プロジェクト規模が大きくなるほど満足度は低下し、500人月以上の大規模プロジェクトでは品質満足度がわずか11%、予算・工期の遵守率も14%程度という衝撃的なデータが出ています。つまり、大規模プロジェクトの約9割が何らかの問題を抱えているという厳しい現実。小規模でも7〜8割が課題を抱えているという状況です。衝撃的ですよね。


でも、もっと衝撃的なのは「トラブルの多くは、最初のすれ違いから始まる」という事実。つまり、プロジェクトがスタートした瞬間から、失敗の種は蒔かれているんです。


今回は、システム開発でよくある失敗事例を、フェーズごとに徹底解説。そして何より大切な「どうすれば防げるのか?」という実践的な防止策まで、リアルにお伝えしていきます。これから開発を検討している方も、過去に痛い目に遭った方も、ぜひ最後までお付き合いください。


※本記事で引用している統計データは、一般社団法人日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)「企業IT動向調査報告書2023・2024」、独立行政法人情報処理推進機構(IPA)「ソフトウェア開発データ白書・ソフトウェア開発分析データ集」などの公的機関による調査結果に基づいています。


フェーズ別によくある失敗事例

システム開発は、いくつかのフェーズに分かれて進んでいきます。そして残念ながら、それぞれのフェーズに「地雷」が埋まっているんですよね。順番に見ていきましょう。


要件定義フェーズ:目的が曖昧、認識のズレ

最も多いのが、この要件定義フェーズでの失敗。実際、IPA(情報処理推進機構)の調査によると、工程遅延理由の55%が要件定義の問題というデータがあります。「業務効率化したい」という漠然とした目的だけでスタートしてしまい、具体的に「何を」「どこまで」システム化するのかが曖昧なまま進んでしまうパターンです。


よくあるのが、発注側は「これくらいできて当然」と思っている機能が、開発側は「それは別料金です」と認識しているケース。お互い悪気はないんですが、この「認識のズレ」が後々、大きな火種になります。


例えば、「売上管理システム」を作る場合。発注側は「当然、CSVで出力できるよね?」と思っていても、それが要件定義書に書かれていなければ、開発側は実装しません。そして納品直前に「え、CSVエクスポートできないの!?」と大騒ぎになる...これ、めちゃくちゃ多いんです。


設計・開発フェーズ:仕様変更・スケジュール遅延

開発が始まってから「やっぱりこうしたい」「この機能も追加したい」という仕様変更。気持ちは分かります。実際に画面を見てみると、イメージと違ったりしますもんね。


でも、開発中の仕様変更は、想像以上にコストとスケジュールに影響します。家を建てている最中に「やっぱり2階建てじゃなくて3階建てにして」と言っているようなもの。すでに作った部分を壊して作り直す必要が出てきたり、他の部分との整合性を取るための調整が必要になったり。


結果として、納期が数ヶ月遅れ、予算も当初の1.5倍に...なんてことも珍しくありません。そして、焦って進めた結果、バグが大量発生という悪循環に陥ります。


テストフェーズ:品質不足、確認不足

「テストは開発会社がやるんでしょ?」と思っている方、要注意です。開発会社が行うのは、あくまで「システムが正常に動くか」というテスト。「実際の業務フローに合っているか」「現場の担当者が使いやすいか」は、発注側がしっかり確認しないと分からないんです。


よくある失敗が、テスト期間を十分に取らず、「まあ大丈夫だろう」と本番リリース。そして実際に使い始めたら、「この操作、5回もクリックしないといけないの?」「この入力欄、全角しか入力できないの?」といった現場の悲鳴が...。


特に、エラーハンドリング(異常系の処理)のテストが不足しているケースが多いですね。正常に動くパターンだけテストして、「数字じゃなくて文字を入力したらどうなる?」「必須項目を空欄にしたら?」といったイレギュラーなパターンを試していない。本番環境でユーザーがエラーを起こしまくって、システムが使い物にならない...なんてことも。


納品後:運用サポートが不十分

無事に納品されて「やれやれ」と思ったのもつかの間。実際に使い始めると、「この操作方法が分からない」「データの修正ってどうやるの?」「サーバーが落ちたんだけど!?」といった問題が次々と。


でも、契約書を見返すと「保守サポートは別料金」の文字が...。あるいは、サポート期間は3ヶ月だけで、それ以降は有償。緊急対応は平日9時〜18時のみで、土日祝日は対応不可。

運用マニュアルも、専門用語だらけで現場の人には理解できない。結局、システムはあるけど誰も使わない「お飾りシステム」になってしまうケースも少なくありません。


失敗の原因分析

これらの失敗事例に共通する原因を深掘りしてみましょう。


コミュニケーション不足

圧倒的に多いのが、これ。発注側と開発側のコミュニケーション不足です。

「言わなくても分かるだろう」という日本人特有の「察してよ文化」は、システム開発では命取り。開発者は超能力者ではありません。きちんと言葉にして伝えないと、絶対に伝わりません。


逆に、開発側も専門用語を使いすぎて、発注側が理解できていないまま進んでしまうことも。「API」「レスポンシブ」「フロントエンド」...IT業界の人には当たり前でも、一般の方には呪文にしか聞こえませんよね。


定期的なミーティングを設定していても、「進捗報告だけ」で終わってしまい、認識のズレに気づかないまま進行...というパターンも多いです。


契約範囲の曖昧さ

「だいたいこれくらいの予算で」「できるだけ早く」といった曖昧な契約は、トラブルの温床です。


何がどこまで含まれているのか。追加開発が発生した場合の費用はどうなるのか。納品の定義は何なのか(画面ができたら?テストが終わったら?本番稼働したら?)。こういった基本的なことが明確になっていないと、「言った言わない」の泥沼に入り込みます。


特に「一式◯◯万円」という見積もりは危険。「一式」の中に何が含まれているのか、きちんと確認しないと後悔します。


担当者変更・人材不足

プロジェクト途中での担当者変更も、失敗の大きな原因です。

発注側の担当者が異動や退職で変わると、それまでの経緯や意図が引き継がれず、「なんでこういう仕様にしたんだっけ?」状態に。新しい担当者が「やっぱりこうしたい」と仕様変更を求めて、プロジェクトが迷走...。


開発側も同様で、途中でエンジニアが抜けると、そのエンジニアしか知らない仕様やコードが宙に浮いてしまいます。引き継ぎが不十分だと、バグの温床になったり、修正に時間がかかったり。


また、そもそも開発会社側のリソース(人材)が不足していて、「実は外部の協力会社に丸投げしていた」なんてケースも。こうなると、品質管理が甘くなったり、コミュニケーションがさらに複雑になったりします。


トラブルを防ぐための実践策

さて、ここからが本題。どうすればこれらの失敗を防げるのか?具体的な対策をお伝えします。

要件定義書と合意書をきちんと作る

面倒くさがらずに、最初にしっかり時間をかけること。これが最大の防御策です。

要件定義書には、「何を」「どうやって」「どこまで」実現するのかを、具体的に書きましょう。画面のイメージ図(ワイヤーフレーム)を入れるのも効果的。「商品一覧画面には、商品画像・商品名・価格・在庫数を表示し、検索機能と並び替え機能を実装する」といった具合に。


そして重要なのが、「これは含まれない」という除外項目も明記すること。「スマホ対応は今回は含まない」「多言語対応は別フェーズで実施」など。後から「当然含まれていると思った」と言われないためです。


この要件定義書を、発注側・開発側双方がしっかり読んで、合意書にサイン。これだけで、トラブルは激減します。


定期レビュー・進捗共有

開発期間中も、こまめにコミュニケーションを取りましょう。

週次や隔週でのレビューミーティングを設定し、「今週はここまでできた」「来週はこれをやる」「ここで詰まっている」といった情報を共有。このとき、実際の画面を見せてもらうのがポイントです。「イメージと違う」に早く気づけます。


進捗管理ツール(Backlog、Redmine、Trelloなど)を使って、タスクの状況を可視化するのもおすすめ。「今、どこまで進んでいるのか」が一目で分かります。


問題が発生したら、すぐに共有。「まだ大丈夫だろう」と隠すと、取り返しのつかないことになります。早期発見・早期対応が鉄則です。


契約形態(準委任・請負)の理解

システム開発の契約には、大きく分けて「請負契約」と「準委任契約」があります。この違いを理解しておくことも重要です。


請負契約は、「◯◯というシステムを△△万円で作ります」という成果物に対する契約。納品されたシステムが仕様通りに動かなければ、開発会社に責任があります。ただし、途中での仕様変更は追加費用が発生しやすく、柔軟性は低め。


準委任契約は、「エンジニアの作業時間」に対する契約。月◯◯時間で◯◯万円、という形。仕様変更に柔軟に対応できますが、「何時間かけても完成しない」リスクもあります。また、成果物の完成責任は基本的にありません。


どちらがいい悪いではなく、プロジェクトの性質に合わせて選ぶことが大切。要件がかっちり固まっているなら請負、アジャイル的に進めたいなら準委任、といった具合に。


テスト項目の明文化

テストも、行き当たりばったりではダメ。事前にテスト項目を洗い出し、チェックリストを作りましょう。


正常系テスト:通常の操作で正しく動くか

  • ログインして商品を検索、カートに入れて購入完了まで

  • 管理画面から商品を登録、編集、削除できるか


異常系テスト:エラーが起きたときに適切に処理されるか

  • パスワード間違いでログインするとエラーメッセージが出るか

  • 必須項目を空欄にして登録しようとすると警告が出るか

  • 在庫以上の数量を注文しようとするとエラーになるか


負荷テスト:同時に多数のアクセスがあっても耐えられるか

  • 100人が同時にアクセスしてもサーバーが落ちないか


セキュリティテスト:不正アクセスや情報漏洩のリスクはないか

  • SQLインジェクション対策がされているか

  • 個人情報は暗号化されているか


これらをExcelやGoogleスプレッドシートにまとめて、一つ一つチェックしていきます。地味ですが、これが品質を守る最後の砦です。


成功事例に学ぶ:うまくいった開発プロジェクトの特徴

失敗ばかり見てきましたが、もちろん成功しているプロジェクトもたくさんあります。その特徴を見てみましょう。


双方の信頼関係

成功しているプロジェクトに共通するのが、発注側と開発側の信頼関係。

「この会社なら任せられる」「このお客さんは誠実に対応してくれる」という相互信頼があると、多少のトラブルがあっても、「じゃあこうしましょう」と柔軟に対応できるんです。


逆に、お互いに疑心暗鬼になっていると、ちょっとしたことでも「契約書には書いてない」「そっちの責任だ」と揉めます。


信頼関係を築くには、透明性が大事。進捗も課題も、包み隠さず共有する。できないことは「できない」とはっきり言う。そういう誠実なコミュニケーションの積み重ねです。


柔軟な対応+明確なルール

「柔軟」と「ルール」は矛盾するようですが、実は両立できます。

明確なルールを作った上で、その範囲内で柔軟に対応する。例えば、「仕様変更は週1回のミーティングで判断する」「軽微な修正は無償、大きな変更は見積もりを出す」といった具合。


何でもかんでも「まあいいか」で進めると、後で収拾がつかなくなります。かといって、ガチガチに固めすぎると、いいアイデアが出ても実現できない。このバランス感覚が重要です。


小さく始めて改善を重ねる「アジャイル」手法

最近主流になっているのが、アジャイル開発という手法。

従来の「ウォーターフォール」開発は、最初に全部の要件を決めて、設計→開発→テスト→リリースと一気に進めるスタイル。対してアジャイルは、小さな機能単位で「設計→開発→テスト→リリース」を繰り返していく手法です。


例えば、ECサイトを作るなら:

  • 第1スプリント(2週間):商品一覧と詳細ページだけリリース

  • 第2スプリント(2週間):カート機能を追加

  • 第3スプリント(2週間):決済機能を追加

  • 第4スプリント(2週間):会員登録機能を追加


こうすることで、「実際に動くもの」を早い段階で見られるので、認識のズレに気づきやすい。方向性が違っていても、軌道修正しやすい。リスクを分散できるんです。


「完璧を目指さず、まず動くものを作る。そして改善を重ねる」というアジャイルの考え方は、失敗を防ぐ上でとても有効です。


まとめ:失敗を防ぐ最大の鍵は「見える化」と「合意の積み重ね」

ここまで、システム開発の失敗事例と、その対策を見てきました。

公的機関の最新調査データ(JUAS 2023)が示す通り、大規模プロジェクトの約9割、小規模でも7〜8割が何らかの問題を抱えています。特に「計画時の考慮不足」が失敗要因の第1位であり、工程遅延理由の55%が要件定義の問題に起因しています(IPA調査)。しかし、成功率は年々改善傾向にあり、適切な対策を講じることで失敗は防げるということも示されています。


結局のところ、失敗を防ぐ最大の鍵は「見える化」と「合意の積み重ね」です。

  • 何を作るのか、どこまで作るのかを「見える化」する(要件定義書)

  • 進捗状況を「見える化」する(定期レビュー、管理ツール)

  • 問題点を「見える化」する(早期共有)

  • テスト項目を「見える化」する(チェックリスト)


そして、それぞれのフェーズで、しっかり「合意」を取る。口頭だけでなく、文書に残す。後から「言った言わない」にならないように。


面倒くさい?確かにそうかもしれません。でも、後で大炎上して予算も時間も無駄にすることを考えたら、最初にしっかり時間をかけた方が、結果的にはるかに効率的です。


システム開発は、発注側と開発側が「一緒に作り上げるもの」。丸投げでうまくいくことは、ほぼありません。適度な距離感を保ちつつ、密にコミュニケーションを取りながら進めていく。これが成功の秘訣です。


「また失敗したくない」あなたへ

過去にシステム開発で痛い目に遭った方も、これから初めて挑戦する方も、「本当にうまくいくだろうか...」という不安はあると思います。


そんなときは、経験豊富なパートナーと一緒に進めるのも一つの手。アビココ株式会社は、要件定義から運用保守まで、丁寧にサポートする開発会社です。


「こんなシステムを作りたいんだけど、何から始めればいい?」「前に失敗したんだけど、今度こそ成功させたい」といった相談にも、親身に対応してくれます。


まずは気軽に相談してみてはいかがでしょうか?



「見える化」と「合意の積み重ね」を大切に、あなたのシステム開発が成功することを願っています!


参考文献


トラブルを防ぐには、外注の全体像を理解しておくことが大切です。

システム開発を外注する際のポイントと費用相場
www.abicoco.co.jp
システム開発を外注する際のポイントと費用相場
システム開発を外注する際のポイントと費用相場※本記事は、アビココ株式会社が提供するサービスに関連する内容を含みますが、読者の皆さまに有益な情報をお届けすることを目的として執筆しています。なぜ今、システム開発を外注する企業が増えているのか「うちもそろそろシステム化しないとまずいよね」って話、社内会議で出たことありませんか?実は今、中小企業からスタートアップまで、幅広い企業がシステム開発の外注に舵を切っています。理由はシンプル。自社でエンジニアを抱えるより、必要なときに必要な技術を借りる方が、圧倒的に効率的だからです。背景にあるのは、深刻なIT人材不足。経済産業省の調査によれば、2030年には最大約79万人ものIT人材が不足すると予測されています。優秀なエンジニアの採用は年々難しくなっていますし、採用できたとしても育成や定着には時間もコストもかかります。それなら「餅は餅屋」ということで、プロに任せてしまおう、というわけですね。特にDXが叫ばれる昨今、業務効率化や顧客体験の向上を目指してシステムを導入する企業が急増中。外注はもはや「大企業だけのもの」ではなく、規模を問わず選択できる現実的な手

外注がうまくいくための準備・相場・進行管理のポイントを、初心者にもわかりやすくまとめています。

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